†終†

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  そして……、 初めて眼にする      ア  スサ 第2階層の荒れ荒んだ 街並みの光景の中、 ロアは、 セキルと共に目的の場へ 向かいながら、 聖域を出る直前に 聖主と交わした会話を思い出す。 ―『聖銀の髪と紫水晶の瞳の持ち主…貴方はそれをご存じですよね』― ディフェル達を先に退室させ、 ロアと聖主の二人きりになった 聖務室内。 聖務用の席に座る 聖主の前に立ち、 淡い冷笑で問い掛けるロアに 威厳に満ちた表情で無言の聖主。 「相手は貴方と同じ“名も無き者”」 ロアは返答の返らない事を 当たり前とした態度で 気にする様子もなく、 敢えて、 “聖界の名も無き主”である、 聖主と夢の中の相手を 同列にして表す。 それが何者を示すのか、 理解している上での指摘。 二人の間に走る 亀裂ような空気。 親子である以前に、 聖主と それに対なす者であるロア。 「確認は取れましたので、失礼します」 沈黙は肯定として、 ロアが退室しようとすると、 「待て」 二人きりとなって、初めて ロアに掛かる聖主の声。 退室を引き留める聖主の言葉に ロアが一度、返した踵を戻すと、 「これを持っていけ」 聖務用の机の上に置かれる 小さな水晶のペンダント。  
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