†終†

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  聖域と第6階層以外の場で ロアの身分を証す 証明の役割も持つそれを、 故意にロアを引き止め 聖主は渡す。 「分かりました」 その意図を 問わずに受け入れるロア。 そして、 ロアが机の上のペンダントを 無造作に取ると、 「代償術は使うな」 唐突に重く命じる 聖主の言葉。 力の封印されているロアが 唯一、使える術である “代償術” 己の体の機能を一つ、 力の代償にして 求める術を行使するその術を 禁止する聖主の命に ロアは軽く眼を見張り、 聖主を見据える。 代償術が使えないとなると 両脚に障害を持つロアは、 争いの場ではただ護られ 状況によっては 足手纏いとなるだけ。 ロアが最も厭う立場になれと 命じる聖主にロアは、 「訳を…」 ヒヤリ―とした 美し過ぎる冷笑と、 聖主でなければ、 身を凍えさせ凍り付くほど 冷淡な声で、 「お聞かせ下さい、聖主様」 淡々と理由を問い掛けた。 ――――― 『………心の臓』 セキルの隣を歩きながら 聖主に告げられた 代償術を禁止する理由を ロアは思い浮かべる。 教えられれば 幾つか思い当たる事があった 心の臓の衰弱。 はっきりとした確証は無いが 代償術を使えば、 発作を起こす可能性があると ロアは説明されていたが…、 傍らを歩くセキルと 自分達の後を追い、 背後から護衛するクロア。 弟と恋人に交わした未来。 その為にも、 『もしもの時は………』 密やかな決意を ロアは胸に秘める。  
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