†決†

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  出入口は一つ。 窓もない室内で 上級魔族を正面に 粗野な男達に囲まれている状況。 自分とロアの立ち位置と 出入口の扉、魔族との距離。 一番近くに居る男達の数。 それらを把握して、 「兄上」 セキルの状況把握まで、 意味の無い会話で 場を取り持ってくれていた ロアに囁くセキルの合図。 「で…」 ロアはセキルの合図を 素知らぬ様に聞き流す素振りで 「要求の目的は何だ?」 魔族へ本題を斬り込む。 要求の目的が何であれ、 応えるつもりのない 形だけのロアの問いに、 魔族は微笑を絶やさぬまま、 「たいした事では御座いません」 緩やかな口調で前置きし、 「ただ…我等が主より御伝言と寸志を…」 「…………………」 上級魔族の主。 厭でも ただ一つの存在を示す言葉。 その相手からの伝言と 贈り物があると告げる魔族。 そして、 「“次期聖主の資格を持つ者は二人も要らぬであろう”………“リデア”と…」 魔族がその言葉と名を口にした 瞬間、 「―――ッ!!」 ロアの意識が闇に引き摺られ 「兄上ッ!?」 セキルは意志が消え、 糸の切れた人形のように 床に崩れ込む ロアの身体を抱き支えた。  
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