†決†

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  「魔獣ッ!!」 変化が終わると 室内に噎せるほど満ちる 獣の体臭と低く響く唸り声。 元となった男達の 体躯と変わらない巨体の魔獣に 焦りの色を見せ、 息を呑むセキル。 魔族はそんな獰猛で凶悪な 獣の群れの中、 セキルとセキルの結界で 護られたロアを一笑すると、 「では…悪夢の一時をごゆるりと…」 「待てッ!!」 優雅な礼を一つ残し、 虚空へと姿を消した。 窓さえもない広い室内。 自ら動く事の出来ない ロアと共に 魔獣の群れの中に置かれた セキル。 「…………………」 迂闊に動く事も、 ロアを連れて逃げ出す事も 容易くない、 一触即発の殺気の満ちる中で、 『せめて……兄上だけでも…』 セキルの守護結界がなければ ロアをも襲うであろう 魔獣を睨み、 『護らなければ…』 胸に過る、幼い頃からの誓い。 ずっと想い続けていた 誓いを胸に、 「かかって来いッ!!」 兄だけでも護る決意を決め、 初陣となる戦いの火蓋を セキルは切った。  
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