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「目的は何だ」
答えが返らないと
判っている上での詰問。
魔王と共謀してまで
封印された状態での
復活を果たしたリデアの目的。
[うん、時が来たら判るよ]
案の定と云えるのか、
柔らかな笑顔でのリデアの答え。
“時”
一体、何の時なのか…。
ロアの冷たい無表情に
更なる剣呑さが増す。
[それよりも…ねぇ、外は大変な事になってるよ]
ロアの怒りをモノともせず
リデアは鏡面を
繊細な指先で緩やかに撫でると
姿見に浮かび上がる
外と指摘された場の光景。
ロアの意識が
闇に引き摺り込まれる
直前まで居た室内で、
何頭もの魔獣に囲まれた弟、
セキルの様子に、
「ッ!?セキルッ!!」
瞠目し動揺を顕にするロア。
「これは……亜種…ッ」
[うん……まさか彼がここまでするとは…少し予想外…だったかな]
セキルと魔獣の他に
半獣の姿で負傷し床に転がる
天族の男だったモノ達。
魔性を与え
亜種とした天族の者を
更に魔獣へと変貌させた
予想外の形で予測通りの結果に
苦し気な声を絞り出すロアと
本当に少しだけ
困った様子を見せるリデア。
リデアの目的と併せた
魔王のもう一つの目的。
正当な次期聖主の資格の持ち主
セキルを狙った光景に、
「貴様の目的は果たされただろうがッ!!私をさっさと戻せッ!!」
ロアは叫びに近い声を上げ、
姿見の鏡面に拳を叩き付け、
リデアは、
[それは兄君の暗示を完全に解かなきゃいけないから…少し難しいかな?]
どこまでも穏やかな態度のまま
のんびりとした口調で
優しく微笑んだ。
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