†決†

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  血と獣の臭気。 殺意に満ちた獰猛な唸り声と 絶望に狂気を孕んだ呻き。 咆哮を上げ飛び掛かってくる 複数の漆黒の巨体を 跳躍で退けながら、 「ッーアッ!!」 苦し気な気合いの声と 空に走る横凪ぎの一閃に 降り下ろしの閃光。 「ガァァァ…アァァァァッ!!」 直後に轟く、 咆哮と絶叫の不協和音。 一刀で斬り伏せられ、 床に転がり落ちる半獣の躰。 限られた広さの室内で 魔獣の群れとの距離を 最大限に取り、 乱れ上がりかける息を 肩で大きく喘ぐように整え、 澄んだ青い瞳で 鋭く正面を見据えるセキル。 戦闘の最中に元に戻った髪と瞳。 セキルの聖剣で斬られ 半獣と成った男達の躰が 幾つも横たわる室内。 既に息絶え動かぬ者と 息絶えるまで 絶望の呻きを上げる者。 亜種とされ魔獣にさせられた 男達の末路。 セキルの持つ聖剣では 魔性を絶ち、 瀕死の状態にしか出来ない 正に 狂気と絶望の壮絶な悪夢。 「ッ…」 初めて目にする あまりに救いの無い光景に 怯みそうな心を奮い立たせ、 『集中しろッ!!』 セキルは自身を叱咤する。  
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