†決†

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  下手に意識が逸れてしまえば 弱まり崩壊してしまう守護結界。 故に、 魔獣と結界の維持に 意識を集中しなくてはならない 戦闘。 『余計な事は…考えるなッ』 汗で滑りそうになる剣を 握り直して、 「兄上に近付くなッ!!」 ともすれば、ロアを狙い 強度の弱まるセキルの結界に 牙を剥き、爪を向けようとする 魔獣に恫喝し、 自ら進んで標的となるセキル。 「ガァァァァッ!!」 咆哮を上げ飛び掛かる魔獣。 「クッーァッ!」 「アァァァァッ!!」 魔獣の攻撃を躱しきれず、 セキルの腕から僅かに散る鮮血。 鋭い激痛が腕から脳髄に走り、 正常な意識を襲う。 それでも…、 『怯むなッ!!』 構うこと無くセキルは 剣を振るう。 幼い頃から誓い続けた 想いのままに 兄、ロアを護る為…。 一度は、 もう二度と自分では 護れないかもしれないと思った 兄への誓いの為に…。 それを― 喪いかけた切っ掛けは セキルの成人の日の出来事。 ―『わた…し、が…聖主?』― 成人の儀の直後、 兄と共に父に招かれた聖務室。 応接用の数人掛けのソファーに 兄の隣りに座らされ、 自分達よりも先に 聖務室へ来ていた叔父と 父に告げられた話を 茫然と呟くセキル。  
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