†決†

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  「事実、お前は今日、成人した」 成人の儀を終えた事で、 本来、持つべき資格の理が セキルの中で目覚めた事を 聖主は無情に告げ、 「隣を良く視てみろ」 「え…?」 突き付けられる現実に 言葉を無くしたセキルに 隣に座るロアを 間近で視ろと言われ、 兄を観た直後、 ――――― セキルの意識を襲う空白の時と、 「セキルッッ!!」 叔父の怒号。 「え?………あ…」 いつの間にか聖主に 片腕を掴まれ、 兄から引き離されている自分と、 「ッ……ぁ………セ…キル…」 叔父の腕の中に庇われた状態で、 乱れかけた胸元を掻き合わせ 蒼褪めどこか怯えた表情で セキルを愕然と見詰める 兄が居た。 何が起きたのか覚えてはいない。 ただ、 間近で見詰めた兄が、 酷く繊細で美しく…、 禁忌の蜜華のように 狂おしい程に愛おしいと想った。 幼い頃からただひたすらに 護り支えたいと誓い続けた兄を 狂わせ傷付けてでも愛したいと あの日から、 聖主の宿命に狂い始めたセキル。 自分は兄に近付いてはいけない 自分にはもう、 兄を護り支える資格がないと その時に、 自分自身の宿命の狂気に 誓いを喪い絶望した。  
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