†決†

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  天空を純白の姿態が舞い 聖告鳥の鳥影が 第2階層の地上に射す。 突如、顕れた上級魔族によって クロアを含む、 ロア、セキルの居る筈の部屋と そこに到るまでの廊下を 消されたフィリル達は、 上級魔族から放たれた 瘴気の拡散を防ぎ、 周囲から現状を隠す為に 幻影の隔離結界を施した状態で 唯一、第2階層に遺された 隠れ家の建物の一部と敷地に 留まっていた。 遺された建物の店屋の出入口で 建物の一部が消える前の姿を 投影した幻影の隔離結界を 維持しているフィリルと、 店内に遺された半獣の亡骸や 敷地内を調べ、 魔族と共に消えた場の 手掛かりを探している セキルの側近の一人、ガイル。 もう一人のセキルの側近は 上級魔族の出現と現在の状況を 第6階層の対策本部に居る ディフェル達と 聖域に居る聖主に報せる為に 一時、この場を離れており、 遺された現場を ある程度調べ終えたガイルは 店内を通り、 出入口から一度出てくると、 「大丈夫ですか?」 出入口横の壁に軽く背中を預け、 凭れ立っているフィリルに 声を掛ける。 「え…?あー…はい、大丈夫です」 切迫した状況でありながら のんびりした口調と態度で 応えるフィリル。 実際は投影する情景を 思い描く為に、 それなりの集中力を 必要としているのだが、 フィリルは敢えて、 平然とした態度を見せる。  
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