†決†

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  意識が無く、 セキルの守護結界の中に 護られていた筈のロア。 突然の状況とロアの出血に驚き、 セキルは自分の元に 駆け出した時の負荷で、 脚が動かなくなっている ロアを支え、 共に床へ倒れかけた体を 起こすと、 「なにを…ッ……、」 床に座り込んだまま、思わず、 問い詰めそうになる言葉を 呑み込み、 「我慢して下さい……、」 「ッ……!!」 自分の着ていた服の袖を 引き抜き、 ロアの左肩を止血する。 新たに張った セキルの守護結界の中で 止血される痛みに堪え、 「けりを…着けるぞ…」 淡々と告げるロア。 セキルの結界の中から 残る魔獣と 床に倒れ付した半獣の男達を 無関心にも見える様子で見詰め 宣言するロアに、 「駄目です!」 セキルは鋭く制止を掛ける。 「セキ…」 「代償術は使わせません」 「………お前…、」 セキルの制止を 拒もうとするロアに、 ロアの唯一の使える術を示し 更なる制止を重ねるセキル。 「…父上か」 「聖域を出る際に伺いました」 ロアの心の臓の事を知っている セキルの制止に、 聖主に教えられた事を セキルは告げる。 喩え、 後に己が苦しむ事になっても 他を護る術があるならば、 迷わず使うロアの性情を読み、 セキルにロアの心の臓の事を 告げる決断をした聖主。  
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