†水†

4/32
前へ
/519ページ
次へ
  ロアはクロアの声と気配に うっすらと瞼を開き、 白月の瞳にクロアを写し出すと 一瞬だけ、無事を喜ぶような 淡い安堵の微笑みを浮かべ、 そのまま、 「ロ…、」 「うるさい……だまれ…、」 直ぐに素っ気なく 痛みを堪えた掠れた声で 己の無事を告げた。 そして、 「申し訳…ありません…」 安堵と、それでも拭いきれない 心配を抱えたクロアの謝罪。 次いで、 「ロア様ッ!!」 「セキル様ッ!!」 クロアの後に続き、 駆け付けるフィリルとガイル。 「ガイル…」 「ご無事で……、」 ガイルもセキルの姿を見ると クロア同様に セキルの元へと向かい、 ロアは セキルに支えられた状態で クロアに今だ止まらぬ出血を 更に止血され、 神水を飲むのを手伝わせると 「フィリル…」 「はい」 「お前は対策本部へ…向かい、…熾天使長と前聖司官に、この場の終息を報告し…現場とまだ、息のある者の保護を要請して来い…」 「へ…?」 フィリルに中央へ解決の報告と 現場の管理を伝えるように 指示する。 だが、 「えぇ……と…?」 “息のある者の保護”と云う 一言に困惑するフィリル。 この場で息のある者と云えば フィリルを含む ロア達だけである筈なのだが、 「あ、の…?……ッ!!」 フィリルが周囲を良く見渡せば 「う゛……ぁ……」 幾つもの亡骸に紛れ、 まだ、息のある数名の男達。 天族の姿に戻った事で 助かる見込みの出てきた者達。  
/519ページ

最初のコメントを投稿しよう!

223人が本棚に入れています
本棚に追加