†水†

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  「早く…しろ……」 「あッ!!は、はいッ!!」 自身の事には構わず、 魔獣から直接、元に戻った 無傷の男達を含め、 瀕死の重症者も居る 男達の保護を急くロアに フィリルが慌てて応じ、 部屋を出て行こうとすると、 「―Kol hakavodーッ!!―」 「ッ!!」 室内に響き渡る甲高い声。 ロア達が驚き、 声の方に視線を向ければ 「とても、素晴らしい解決です」 緩やかにネビアスの声で語る 漆黒の鳥。 艶やかで美しい濡れ羽色の躰に 墨を流したように長い尾。 血よりも紅い 石榴石のような深紅の瞳を持つ 美しい魔性の黒鳥が       ロウ 燈を灯す吊り籠の上に留まり、 「まさか……亜種を元に戻すとは、思いもよりませんでした」 聖主の光からなんとか逃れ 仮の姿と成ったネビアスが ロア達を見下ろしていた。 「貴様…ッ」 素早く、ロアを背後に庇い 神剣を手に立ち上がるクロアと ロアを胸に深く抱き寄せ、 腕の中に庇うセキル。 ロアとセキルを護る位置に立つ フィリルとガイル。 「その様に警戒せずとも、直ぐにお遑いたします」 クロア達の反応に 黒鳥の姿で優雅に笑うネビアス。 それでも生じる 緊張を孕む警戒の空気。 「………お前の…主に伝えろ」 「兄上?」 一度、姿を消しながら 再び顕れたネビアスに 睨み合う沈黙が落ちる中で 不意に声を発するロア。 ネビアスの主、 魔王に向けてのロアからの伝言。   
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