†水†

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  それに、 「如何様に?」 楽し気な愉悦の声で ネビアスは応じ、 「“いつか…これらの借り…きっちり…、叩き返してやる。”」 魔王への対抗をロアは宣言する。 今だ止まらぬ出血を抱え、 蒼白な顔色で、 この場に居る誰よりも 脆弱な身で庇われ、 無力でありながら、 毅然とした態度で誇りを喪わず 苛烈な怒りと強い意志を宿す 聖界の次代の主、 “次期聖主、ロア” 「我が主への伝言、確かに承りました」 ネビアスは 喜悦を深く宿した声で クロアの後ろに庇われ、 セキルに護られているロアを 興味深く見下ろし、応じると 「それでは……また“必ずや、再会いたしましょう”」 いつかの再会を予告し、 空を叩く羽ばたきの音と共に 漆黒の尾で空中に軌跡を描き、 姿を消した。 ネビアスの姿と気配が 完全に無くなると、 「兄……、」 「ッ…!!」 ネビアスの残した再会の意図を 問い掛けるセキルに、 唐突に左胸を抑え、 息を詰めるロア。 「兄上ッ!?」 「ロアッ!!」 ロアの異変に一早く気付く セキルとクロア。 「ッ!!ッ!!」 ロアはここに来て、 不意討ちのような発作に 息が出来ず、 『……クロ…ア……』 「ロアッ!!」 心の臓を引き絞る激痛と クロアの焦りの表情を最後に 意識を手離した。  
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