†水†

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  そして、 「魔獣の亜種とされていました組織の者達の件ですが…、」 クロアが報告の最後に 告げたのは、 「生存者は四名。魔獣の亜種から直接、天族へと戻り無傷であった者が三名、一命を取り止めた重傷者が一名……但し、皆、一様に正常な意識の判断が出来ないとの事です」 ロアが聖主の力を召喚した際に 元の姿に戻した男達の安否。 ロア達が居なくなった後の 現場で、 中央組織に保護された 息のあった重傷者の中で 一命を取り止めた者は 僅かに一名。 そして、 魔獣から天族に 直接、戻った為に 無傷であった者達も含め、 全員が精神に異常をきたし 正常な判断、会話等が 出来なくなっていた。 ロアが最後に救いたいと 望んでいたからこそ、 元の姿に戻る事が出来た 男達の末路。 その、 クロアの説明に対する ロアの応えは、 「そうか」 たった一言。 声と言葉だけを聴けば、 酷く無関心で無慈悲、 無責任を感じさせる 冷淡なものであったが…。 クロアの眼に映るロアの 眼差しは、 救えなかった命と、 無理矢理に 生かす事になった命に対する 深い懺悔の想いを湛え、 自覚できない 悲痛な感情を宿すものだった。  
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