†水†

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  「見せてみろ」 ロアの傍へ近付きながら、 最後の確認の為に左肩と左胸を 見せろと指示する聖主に、 「恋人の情の痕がありましたら、どうします?」 からかいの口調での ロアの冷笑。 「それはお前達の勝手だ」 ロアのからかいに 取り合う事なく、 聖主はロアの着ていた寝着を 上体の左半身だけ、はだけさせ、 染み一つ、怪我の跡一つ無い 滑らかな白磁の肌の左肩と、 心の臓の様子を診る為に 左胸の位置に当たる背中に 掌を当てる。 「……セキルの様子は…、」 聖主に心の臓の様子を 診られている最中に セキルの事を訊ねるロア。 クロアには 訊く事が出来なかった、 事件後のセキルの様子。 「中央に復帰している」 魔獣との戦闘で 幾つもの怪我を負ってはいたが 聖主以外の治癒の力が 与えられないロアとは違い、 直ぐに己の側近であるガイルと 自らの力で怪我の治療を終え セキルは中央組織、 熾天使長補佐の任に戻っていた。 「…セキルとの決着を着けます」 「…………………………」 ついでのように セキルと聖主の宿命についての 決意をロアは告げる。 ロアとセキル。 狂いの大罪となる二人の宿命。  
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