†水†

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  無意識に蒼褪め、 強張ってしまうロアの体。 ―『でッ……でもッ!!兄上にはクロアが…クロアが居ますッ!!』― ロアには未だに愛と云うものが 分からないけれど、 恋人同士でもあるクロアの存在。 ―『相手ではなく、お前の気持ちの問題だ、セキル』― ―『ッ…』― 確かにロアではなく、 セキルの気持ち、想い、 心の問題だった。 それでも、 兄弟としての 親愛の情しかないと セキルの言動から感じていた。 少なくとも、 ロアもセキル自身も、 聖主の、 ―『事実、お前は今日、成人した。隣を良く視てみろ』― ―『え…?』― 成人を迎えた事で、 本来、持つべき資格の理が セキルの中に目覚めた事を 告げる言葉までは、 信じていた。 聖主に言われ、 セキルが隣に座るロアを見る。 ―『………………………』― ―『………セキル?』― 間近でロアを見詰めたまま、 急に無言になるセキル。 不意にセキルの右手が ロアの頬に触れ、 そして、 ―『ーッッ!?』― 気付けば、セキルに腕を掴まれ、 引き寄せられたかと思うと ロアはソファーの上に 押し倒されていた。  
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