†水†

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  そこで、 いきなりセキルを ロアから引き離す聖主と、 ―『セキルッッ!!』― ロアをセキルから護るように 腕の中に抱き寄せる叔父の怒号。 ―『え?………あ…』― 正気に返ったセキルの戸惑い。 叔父の腕の中で胸元の袷を 震えた手で掻き合わせ、 ―『ッ……ぁ………セ…キル…』― 漸く出た引き攣るロアの声。 ロアからセキルを 引き離したままの聖主と セキルからロアを 護るような状態の叔父。 身を支配する 恐怖と云う感情を消せずに 愕然と怯えた表情で セキルを見詰めてしまうロア。 嫌でも何があったのか、 分かる現状に、 セキルの表情が顔色を喪い、 ―『あ……ッ――!!』― 聖主の手を振り払い、 聖務室を飛び出すセキルと、 ―『まッ…!!』― 咄嗟に セキルを引き止めようとして 掛ける言葉が見付からない ロアが居た。 ロアの時にはなかった 宿命ゆえの狂いの衝動。 嫌でも突き付けられた ロアとセキルの聖主の宿命が 招く狂いの大罪。 それを消す方法は…。 ――――― 幻想的な光の満ちる聖本殿で ロアは静かに目の前にある 光を見詰める。 全てが明かされたあの日。 セキルの居なくなった聖務室で セキルの持つ次期聖主の資格と 宿命を消す方法を ロアは聖主に訊き、知っていた。  
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