†祷†

3/41
前へ
/519ページ
次へ
  ―「はい、きをつけます」― 兄の注意を笑顔で受け入れる セキルに、 ―「反省してないでしょ?」― ―「ひーへーまーふー」― セキルの頬を 軽く両側から引っ張る兄。 ―「まったく…、お帰りなさい」― ―「はいッ!!」― 呆れながらも出迎えの言葉を 改めて、 兄は笑顔で言い直してくれる。 兄はセキルが物心付く前から 亡くなった母と 公務で忙しい父に代わり、 セキルの面倒を見てくれて 何時も一緒に居てくれた。 賢くて、強くて、 だけど、 可憐な華のように綺麗で 誰よりも優しい自慢の兄。 ―「へぇ…、外の世界には、そんなに沢山の天族や神族が同じ場に居るんだ」― ―「はいッ!!たくさんでびっくりしました」― 兄にとっては未知である 聖域の外の世界。 ―「凄いねー」― ―「すごかったです」― 兄とは違い、 5歳を迎えた頃から 聖域の外に連れ出して貰える セキルの話を嫉む事なく、 いつも、 聖本殿でセキルの帰りを待ち、 無事を喜ぶ安堵の笑顔で出迎え、 お土産を兼ねた外の話を 素直な驚きと羨望の気持ちで 聞いてくれた。  
/519ページ

最初のコメントを投稿しよう!

223人が本棚に入れています
本棚に追加