†祷†

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  「寝かせて置いてあげなさい」 「!?…父…上……ッ!…ィ…タ…」 兄の寝ている方とは 反対側にあたる、 天蓋幕の降りている方から 父、聖主の声が聞こえ、 振り返ると同時に全身に走る 痛みに セキルは息を詰めてしまう。 「大丈夫か?」 天蓋幕が上がり、 聖主が姿を見せ、 「ゆっくりと動きなさい」 「はい…すみません」 急に動いたせいで生じた 痛みの原因を診て、 起き上がろうとするセキルを 手伝う聖主。 宿命を消す決闘の日から数日。 体に負った怪我は 直ぐに聖主が治療したが、 意識だけが 目覚めなかったらしいセキル。 「兄上はもしかして…?」 セキル、聖主の居る状況で 珍しく熟睡している兄の姿に、 「ずっとお前の傍に着いていた」 脚が動かない間も、 セキルの傍を離れなかった事を 聖主は穏やかに告げる。 小声で交わされる会話。 おそらく、セキルには 絶対に知られたくないであろう 兄の事実を、 分かっていながら説明する父に、 「えーと………クロアは…?」 とりあえず、 聞かなかった事にする為、 兄がこの場に居るのなら 確実に外に控えているクロアの 居場所を確認してみる。 「知っての通り、外に居る」 セキルの考えを含む、 予想通りの聖主の応え。  
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