†祷†

9/41
前へ
/519ページ
次へ
  「……………父上、」 「何だ?」 「ご心配をおかけしました」 今回の件で心配を掛けた事を 漸く謝罪するセキルに、 「よく頑張った」 父親として、 息子を誇る言葉を掛ける聖主。 真実を知り、 宿命を消す方法を知った時、 兄に剣を向けさせる為に、 敢えて、 宿命の狂いに心を委ね、 呑まれる事を選んでいたセキル。 父は宿命を消す術をセキルに 教えた時から気付いていた セキルの決意。 その為に理性と狂いの狭間で 苦しむセキルに、 無理はするなと、 下手をすれば、 完全に宿命の狂いに呑まれ、 二人共が取り返しのつかない 状態になると、 警告の言葉を掛けていた。 「兄上は…、」 「とっくに気付いていただろう」 「ですよね…」 自分の為に 望まぬ宿命の狂いに心を委ね、 追い詰めてくる弟、セキルを、 兄がどんな想いで見詰め、 セキルが無事で済む他の方法を 必死に探し続けていたのか、 それを知るのはきっと ただ一人だけ。 「父上、」 「何だ?」 「きっと、叔父上の元に養子に出なければ、私はこの聖域で兄上と二人きり…宿命に狂う事も兄上を所有する未来も、当たり前の事として受け入れていたと思います」 外の世界を知り、 他者との交流を含め、 相手を互いに想い合う気持ち、 心から愛し合う愛の形を 知っていたからこそ、 狂いに耐える事が出来た セキルの告白。  
/519ページ

最初のコメントを投稿しよう!

223人が本棚に入れています
本棚に追加