†祷†

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  微かに聞こえる、 紙片の掠れ合う音の中、 ロアがセキルの寝室で 目を覚ますと、 「あ!兄上、おはようございます」 寝台に伏せていた体を起こす ロアへ、 明るい口調と笑顔で声を掛ける セキルが居た。 「大分、お疲れのご様子でしたが、大丈夫ですか?」 「…………………………」 どこか、のんびりとした 柔らかな問い掛け。 成人を迎える前と同じ態度の セキル。 寝台の上に上体を起こし、 幾つかの書類を膝の上に広げ、 確認していたらしいセキルに 「兄上?」 「…………………………」 無言、無表情のままのロア。 目が覚め、 セキルが目覚めている様子を 見ても、 セキルが、珍しく自分の前で 熟睡していたロアの 体調を気遣い訊ねても、 何の反応もなく、 無言、無表情のまま、 セキルを見ているだけのロアに 「えーと、兄上?」 流石に心配になった セキルが声を掛け直す。 すると、 ロアは何の前触れもなく、 寝台の上に軽く乗り上がり、 「…………………………」 「はにふふんへふは?」 おもむろに セキルの頬を両側から引っ張る。 そして、 「イーッ!!イタイッ!!イタイッ!!イタイッ!!イタイッ!!兄上ッッ!!」 無言でセキルの頬を     ツネ 思い切り抓るロアと、 セキルの叫び。  
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