†祷†

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  そして、 「兄上」 「何だ?」 「ご心配をおかけしました」 セキルの方からロアを 真っ直ぐに見詰め返し、 これまでの事を謝罪する。 すると、 ロアは軽く俯き、 表情を髪で隠し、 「私も…悪かった」 微かに震えているようにも 聞こえるロアの謝罪。 互いを想う心が招いた結果。 どちらも悪い訳ではない。 けれど、 傷付け合ってしまった 優しさに対する謝罪。 「兄上は…、」 「?」 互いに無言になってしまった 沈黙を破り、 「無表情ですが、分かりやすいですよね」 「………………………」 ほんわりとした笑顔で 爆弾発言を投下するセキル。 言葉を換えれば、 暗黙として、 ロアを“単純”と言っている セキルの発言に、 「…セキル」 「はい」 ロアは、 「父上の治療は怪我の内容、状況によっては、数日、痛みが残る」 「そのようです」 聖主に治療された場合の状態を 説明をし、 「私は自らが負わせた怪我の位置を“正確”に把握しているぞ」 「え…とぉ…」 ロアの真剣でセキルが負った 怪我の位置を指摘し、 「圧すぞ」 ボソリ―と 低い声でのロアの一言。 途端に、 「ご免なさいッ!!すみませんッ!!…ちょッ!!兄上ッ!!」 蒼褪め引き攣るセキル。 見た目の傷は完治しているが 痛みだけは残っているセキルへ 「兄上ッ!!本当にご免なさいッ!!」 ロアは壮絶なまでに美しく 嗤ってみせた。  
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