†祷†

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  セキルの寝室の扉の前に クロアが控え立っていると、 寝室の内側から扉が開き、 「ロア様」 漸く目覚めたセキルとの 対面を終えたロアが出てきた。 ロアとセキル。 部屋の中で二人の間に どの様なやり取りがあったのか クロアが知ることは出来ないが、 ロアはセキルの寝室から 出てくると、 真っ直ぐに、 クロアの元へと近付き、 ぱふ―と軽い仕種で クロアの胸元に顔を埋め 凭れ掛かる。 「部屋に運べ」 クロアの胸元に 表情を隠したまま、 短く告げるロアの命。 宿命を消す決闘で 一時的に 昔のように動ける状態へと 歩行機能を聖主に再生された ロアの両脚。 その後、 数日の間はその時の負担で ロアは完全に歩く事が出来ず、 今もまだ、歩き回るには 少し不自由な状態。 クロアはロアを部屋に運ぶ為に 慣れた仕種でロアの体を 抱き上げる。 ―と、 ロアはクロアの肩に顔を伏せ、 腕を回し、 きつく抱き着く。 何も言わないけれど、 それだけで伝わる、 ロアのセキルの目覚めに 心から安堵し、 喜びだけではない 複雑な想いに満ちる心。 クロアだけが知っている、 ロアの姿。  
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