†祷†

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  クロアの心に 迷いが無かったと言えば 嘘になる。 セキルの行動に 追い詰められるロアの姿に、 クロアの持つ 神族さえも殺める剣、 [神剣]の存在が、 心を惑わす事も確かにあった。 それでも、 ―「お前が居なければ…、私は耐える事など出来ていない…」― たった一度だけ、 ロアが零した弱音。 記憶を喪う前日の夜、 クロアの腕の中で 縋る眼差しを浮かべ、 クロアの存在が無ければ、 セキルの狂いに耐えられず 母のように狂う事を 選んでいたと告白したロア。 愛が分からなくても、 クロアだけを求めるロアの心。 恋人の存在を支えに耐える 最愛の姿、 想いがあったからこそ、 クロアは傍に居る事しか 出来ない状況で、 ロアを支え、 見守る事が出来ていた。 そして、 記憶を喪い、 取り戻す過程と 聖主の宿命の狂いが招く 結果を利用した魔王の計略。 それらを経て、 漸く下されたロアの決断。 聖本殿でセキルに剣を向け、 決闘と云う形で、 ロアはセキルの宿命を 断ち切った。  
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