†祷†

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  クロアも聖主と共に立ち会い、 見届けた決闘。 ―「ロア様ッ!!」― 決着が着いた直後、 セキルの傍らに座り込む ロアの元にクロアが駆け寄ると、 床に横たわるセキルを 茫然と見詰めるロアの瞳。 力なく、 憔悴しきったように見える身体。 なのに、 片手だけは、 白く筋が浮き上がるほど、 剣の柄を硬く握り締めたまま…。 クロアは 掛ける言葉が見当たらず、 ―「………、剣を…お離し下さい」― それだけをなんとか口に出し、 クロアがロアの指を 一つ一つ解く事で 漸くロアは真剣を手離した。 セキルはその場で直ぐに 聖主に治療を施され、 生きている事は確認されたが、 数日経っても、 意識だけは戻らなかった。 最悪、 意識が戻らないままかも しれなかったセキル。 セキルの寝室の扉の前で クロアに抱き上げられると、 きつく抱き着くロアの 無言で小さく震えている身体。 奇跡とも云えるセキルの目覚め。 「心地好い夜風が流れておりますので、少し遠回り致します」 喜びの涙も、哀しみの涙も、 泣きたくても泣けない クロアの主、 ーロアー 最愛の心の涙が止まるまで、 クロアは聖殿の夜の庭へと 静かに脚を向けた。  
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