†祷†

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  ―――聖本殿地下。 夜の静寂に生命の全てが 深く沈む深夜の時間帯。 肖像の間に一人、向かう聖主。 足許を照らす 手燭の明かりを片手に、 肖像の間の扉を開くと、 既に灯りの点されている 肖像の間の奥へ、 「それは私の息子の身体だと言った筈です」 重く厳しい口調と表情で、 聖主は言い放つ。 「うん、今ので二度、聞いた」 聖主の言に返る、 明るく穏やかな落ち着いた声。 燭台の灯りに煌めく銀月の髪。 深い智慮に満ちた白月の瞳。 燭台の置かれた小卓に軽く凭れ、 優しく柔らかな微笑みを浮かべ ロアの身体で聖主を出迎えた、 “リデア” 聖主によってロアの中に 封印された筈の存在。 「この子の身体、ちょっとだけ歩くのが大変だった」 リデアは聖主の様子に 少しも悪びれず、 ほんのりと 場違いな笑顔を浮かべて、 この場に辿り着く迄の感想を 口にし、 「これが一番、負担の少ない代償だったんだ」 開口の言葉以外は無言のまま、 入り口近くで リデアを見据える聖主に、 ロアの身体を使える理由を 簡単に説明する。 第2階層で 魔王の暗示を完全に解くために、 リデアがロアに 協力した時の代償。 一時的に聖主の封印を無効にし ロアの身体を一度だけ、 リデアに貸し与える事。  
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