†祷†

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  「お前にも…最後に会いたかったし」 懐かしみを帯びた瞳で 聖主を見詰め、 リデアは ほんの少し寂しそうに微笑む。 古でのリデアの弟、 セラフの転生体、聖主。 ロアの身体を借りた目的を 告げるリデアに、 「ならば、もう用件はお済みでしょう」 聖主は何の感想もなく、 早急にロアの中へと戻り、 封印の眠りに着けと突き放す。 けれど、 そんな聖主にリデアは 暖かみのある眼差しを浮かべ、 「相変わらず、お前は不器用だね」 どれだけ時を経ても 変わらない魂の持つ性情を 指摘する。 時に優しさや思い遣りの感情を 素直に表せなかったセラフ。 リデアの指摘に 聖主が反論する前に、 「ごめんね」 無邪気な笑顔で向ける リデアの謝罪。 古の時代から、 本心を笑顔で隠し続けていた リデア。 そして、 「眠る前にお前に言いたい事があってね…」 漸く、 本当の目的をリデアは明かし、 「私は干渉できないから…何もしてやれないけど…、」 聖主の目の前まで歩み寄ると 「せめて……伝えられる事だけは言いたくて…」 真っ直ぐに、 真摯な眼差しで聖主を見上げた。 そのまま、 「名も無き聖界の主、現聖主」 それまで纏っていた 柔らかな気配を消し、 厳かに、 「汝の望み、祈願は必ずや達成される」 初代聖主であった者として 現、聖主へ与える予言。  
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