†祷†

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  “名も無き聖界の主” 現聖主の望み、祈願の達成。 誰にも明かした事のない、 それを口にするリデア。 思いも寄らない内容に 瞠目し息を呑み、言葉を喪い、 与えられた予言の内容を 鵜呑みにはせず、 リデアの真意を探ろうとする 聖主。 リデアは直ぐ様、 元の柔らかな気配を纏い、 「“クロア・K・キセア”」 不意討ちに ロアの側近、クロアの名を上げ、 「彼が全ての鍵だよ」 意図の見えない無垢な笑顔で、 ほんの少し小首を傾げ、 「まぁ、本人に自覚があるのかは知らないけどね?」 聖主に忠告を添える。 息子の側近であり、恋人の クロアの関わりまでをも示す リデアの言葉に、 「どう…ッ」 聖主は流石に捨て置けず、 問い詰めようと口を開くが、 突然、支えを失ったように 床に倒れかけるリデア、 ロアの身体。 反射的に聖主が抱き止めると 「もう………眠りに着かなきゃ…駄目みたいだ」 聖主の腕の中で 力ない苦笑混じりに上がる リデアの諦めの声。 ロアの身体を使える時の制限が 終わるらしいリデアの意識。 その最後に、 「ねぇ……、私達は兄弟……お前の兄に……私はなれたのかな…?」 リデアからの問い掛け。 セラフと兄弟になる事を 願い続けていたリデアの心。 そのまま完全にロアの身体は 意識を喪い、 「……私は……」 聖主はリデアの意識を喪った、 ロアの身体を見下ろし、 「…貴方を兄だと思った事はありません…」 拒絶ではない、 切ない程の想いを宿す響きで 古の弟―セラフ―の心を応えた。  
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