†祷†

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  晴れやかに澄み渡る 聖域の空の下。 聖本殿の開かれた大扉の前で セキルは、 「んー!天気が良いですね」 思い切り伸びをしながら、 後方に立つ、 ロアとクロアを振り返る。 セキルが目覚めてから更に数日。 聖主に安静を言い渡され、 本日、漸く寝台を出る許しと 聖域を出て、 叔父の屋敷へと帰る許可が 下りたセキル。 絶対安静と云う療養を 経験した事の無い セキルの反応に、 「大袈裟だ」 不本意ながら 絶対安静の療養経験が多い ロアは呆れる。 「そんな事ないですよ」 セキルはそんなロアを見詰め、 朗らかな笑顔を浮かべる。 聖域を出ていくセキルを 公務中の聖主に代わり 見送る為に、 自主的に聖本殿まで出てきた ロアとクロア。 歓迎できる理由では なかったけれど、 数年振りに再開した 兄弟の同居の日々の終り。 振り返れば、不思議と、 どこか寂しくも感じてしまう 日常の終り。 「あッ!そうだッ!」 最後の別れの時を向かえ、 何かを思い出したかのように 声を上げるセキルに、 「何だ?」 無関心にも聞こえる声で 応じるロア。  
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