†祷†

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  ついでに、 「お前も、そろそろ中央へ帰れ」 「あぁ、」 ディフェルへも 退室を促す声を掛け、 聖司官執務室から中央へと 帰還させる。 ディフェル、フィリルが 居なくなった事で、 聖司官執務室内に 一人切りとなったレティス。 「…………………………」 無言のまま、 真剣な面持ちになると、 執務机の鍵の掛かっている 引き出しを開け、 一冊の古い本を取り出す。 レティスが 聖主に関わる記録を 調べている過程で見付けた 古い手書きの手記。 記録者は、 数代前の聖主の双子の 妹とされる、 †ファリア・A・セイン† その古い手記のレティスが栞を 挟んでいる頁を静かに捲り、 「“聖主の宿命”」 ディフェルにも告げなかった 聖主の謎。 レティスだけが 辿り着いてしまった ロアとセキル…、 聖主と成る者が持つ宿命を 口にする。 だが、 聖主と成る者は 神族の血を残す為、愛に狂う。 その宿命に、 「ならば、何故……セキルは“兄”である次期への愛で狂いかけた?」 レティスの鋭い呟き。 “血を残す” ならば、 必要な関係は異性愛。 同性の兄弟である ロアとセキルでは不可能な事。 予言、伝承、口伝は 時として、 他者への漏洩を考え、 真実の一部を隠し、 偽りを絡め、伝えられるモノ。 それに、 見えない混迷する謎が ポツリと レティスの心に刻まれた。  
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