†祷†

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  ―――聖域。 聖殿の北東から南東側にかけ 僅かに聖殿を囲うように拡がる 森の奥。 緑豊かな樹々と木陰、 可憐な草花。 清みきった神水の泉。 聖域のみに生息する 聖獣や霊鳥達が住まう、 自然豊かな聖なる森。 クロアはロアに案内されながら、 その森の奥へと続く小道を 二人きりで歩いていた。 セキルが聖域を出た日。 同じく、 聖殿から自由に出る許しが 与えられたロア。 セキルを見送った後、 ロアはクロアを連れ、 聖殿を出でると 森の散策へと赴いていた。 何故、森の散策なのか? 時折、足を止め、 森の周囲を見渡し、 方角を確認して、 再度、足を進めるロアの姿に 疑問を抱くクロア。 明らかに、 何かの目的を持っているが、 森に入る事が初めてのような ロアの様子。 クロアを 側近として迎え、 聖司官に就任するまでは、 14の頃にたった一度、一日限り 聖殿、聖域を出て、 神殿に赴いた事はあるが、 それ意外では聖殿の外には 出たことの無い筈のロア。 常にロアの傍らに控え、 行動を共にしているクロアが、 聖域の森に入った事が無い以上、 考える迄もなく ロアも初めて入る筈の、 その場に何かの目的があるそれ。  
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