†祷†

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  クロアに 心当たりが無いと言えば 嘘になる。 しかし、 確信が無かった。 クロアの半歩前を歩くロアの 左耳から消えているイヤカフ。 保留になったままの クロアの求婚への返事。 ―「全て…片付いたら…」― 占拠事件の対策本部で、 犯行組織の隠れ家に向かう為、 準備をしていた時に、 ロアがクロアに告げた決意。 その時が来たのかも知れない ロアの行動。 不意に前方を歩くロアが 小道に落ちる小枝に足を取られ、 「ッ!?」 「ロア様!」 咄嗟にクロアに支えられる。 「大丈夫ですか?」 「あぁ」 クロアの腕の中から返る、 ロアのいつもの素っ気ない応え。 聖殿を出て、森に入ってから ロアにとってはかなりの距離。 どこか辛そうにも聞こえる声に 転び掛けた原因が 小枝に足を取られたから だけではない、 ロアの両脚の限界を クロアは察する。 「まだ、距離が御座いますか?」 「…………………………」 ロアを腕に支えたままでの、 クロアの問い掛けに一瞬、 無言となるロア。 目的までの距離が 分からないのか、 それとも クロアに目的を察せられる事を 迷っているのか、 クロアには読めないロアの沈黙。 「案内する」 ロアの端的な命。 「かしこまりました」 案内する故に運べと命じている ロアの言葉に クロアは柔らかく微笑み、 ロアの身体を抱き上げる。  
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