†祷†

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  そのまま告げる、 「私は…ッ、お前に言えない事がある」 振り絞る声での懺悔。 次いで、 「聖主となる者は…天族と……正式な婚姻が認められない」 悲痛な嘆きの言葉。 聖界に於いて、 同性での婚姻は性差の関係から 正式に認められていた。 男性、女性の他に、 無性、両性、 更に、 男性寄り、女性寄りの 無性、両性と、 成長の過程で性差が生まれ、 分かれる性を持つ者も 存在する聖界。 故に、 同性での婚姻は 当たり前の事として、 法で認められ、 ロアとクロアの関係に於いても、 問題は無い筈であったが、 聖主に関しては 神族以外との正式な婚姻が 認められなかった。 婚約までならば、 暗黙に形式としてだけ許される。 しかし、 その先に婚姻の未来は 保証されていない。 「私は未だにお前への愛も分からない」 顔を上げられないまま、 「だからッ」 必死に、 クロアへの応えを探すロア。 愛が分からず、 愛したいと願う者へ 明かせない秘密を抱え、 自由の無い囚われの世界で 確かな約束の未来が持てない ロアの全て。 クロアと永久に結ばれたいと 心は願うのに、 それを許さない現実。 「ッ……」 クロアの隣で ロアの声が詰まる。 何かを告げたくても、 告げられない沈黙。  
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