†祷†

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  そして、 「だからッ!!……お前が決めろッ!!」 現実を捨て去る為に 心を振り絞るロアの言葉。 上着の胸元から何かを取り出し クロアに突き出される ロアの右手。 クロアからの指輪が填められた その手に握られていたのは…、 ロアの紋章である 睡蓮の紋様が刻まれた 銀の髪止めの装飾。 ―と、 左耳に填めていた筈のイヤカフ。 一生を添い遂げる誓いの証しに 自分の紋章を刻んだ装飾を 恋人へ贈る習わしに、 婚約の許しとして与えられた 左耳のイヤカフの交換が、 正式な婚約の証となる聖界。 セキルが聖域を出る前日に 密かに教えてくれたそれ。 「私は…、」 ロアは…、 「お前だけを愛したいッ!!」 愛が分からない心での     †愛の叫び† ―――瞬間、 クロアはロアを掻き抱く。 「貴方の居る所が俺の世界です」 クロアが ロアの世界で在るならば…、 ロアがクロアに取っての 自由な世界。 「言えないならば、永遠に訊きません」 明かされない事柄を 抱えたままのロアを クロアは愛したから…、 喩え、 約束された未来が無くても、 愛が分からなくても、   「†結婚して下さい†」 ロアを胸に強く抱いたまま、 恋人の仕草と、側近の言葉で 永遠の愛を求めるクロア。 それに、 「ッ………許す」 ロアは主の言葉で、 クロアからの婚約を受け入れた。  
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