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ロアは
寝室の扉が閉まる音と同時に
上掛けの中で
自らの左耳を抑えた状態で、
「あの………馬鹿…ッ!!」
圧し殺した切な気な声で毒突く。
「私は正式な…婚姻が結べんのだぞ」
右掌に乗せた水華球を見詰めて
「………………………」
理解できない想いが
ロアの胸中で交錯する。
「………希望を……持つではないか…、」
切実なほどに…、
ロアでは気付けない
ーアイー
想いを込めて呟く願い。
“次期聖主”
聖界の次代の主と成る者ゆえに
天族であるクロアとは
正式な婚姻が結べないロア。
それでも、
クロアから贈られた、
[ウェディングブーケの欠片]
永遠に枯れることのない、
未来の希望を込めた水華球を
胸に抱き締めるように
両手に包み込み、
白月の麗人は、
幸福な夢の淵へと意識を沈めた。
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