出会いを過度に期待する事なかれ

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お昼休みも終わり午後も 淡々と業務をこなしていたその時 「おねがいしまーす。」 入口の方から ひと一倍元気な声が聞こえてくる 目線を向けた先にいたのはマーケティング部の中野くんだった 可愛らしい顔立ちに加え、その人懐っこさからか皆に好かれている後輩だ 「はい、お預かりしますね」 彼に近づき 受けとった書類を確認していると、少し不服そうに唇を尖らせながら言われる 「橘さん、いつになったら飲みに行けるんですかー?」 ーーまたか 毎回、同じ事を言われる だから返す答えも同じ 「んーいつかね。」 「ちぇーー。」 ますます唇を尖らせながら拗ねてみせる中野くん ちくしょー 可愛いじゃないか 「彼氏さんそんなに厳しいんですか?」 「……。」 こういう時 他の人なら何て答えるんだろう 麻衣子や東野君になら 別れたから、とその事情まで話せるけど 親しくもない間柄、 解答に困る こんな時、 麻衣子ならはっきりと言うだろう 「そんなもんとっくに別れたわよ。 理由は浮気されたから。 これ以上聞くならこの書類燃やすわよ。」 …とか? ぷっ、言いそう 「橘さん、何にやけてるんですか?彼氏さんの事ですかーー?」
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