出会いを無下にする事なかれ

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公園に続くアーチをくぐると そこにはすでに一人の不審者がいた 通称 アオイくん 「おはようございます、 ……アオイくん。」 私は今日からこの彼の事を名前で呼ぶ事にした 理由は単純 私の煎れたコーヒーを美味しいと言って飲んでくれたから それだけ 相変わらず、ダサいけど いい加減不審者扱いはやめよう アオイくんは 初めて名前を呼んだ私にほんの一瞬、戸惑いをみせた 「…おはよう、 ななチャン。」 相変わらずニタニタ笑いの彼 今日のTシャツのシミはやけにカラフルだった 「あのっ、これコーヒー。」 「ありがとう、うん、いいカオリ。」 私からコーヒーを受け取り飲みはじめるアオイくん コーヒー好きなんだろうな 美味しそうに飲んでる その場に突っ立ったままの私に 「どうしたの?隣座ればー?」 コーヒーを啜りながらアオイくんは隣のブランコを指差す 指長いんだなー …じゃなくて 「あのっ、羊羹、ありがとうございました。友達と美味しく頂きました。すみませんあんな高価なもの」 「ぷっ、どう致しまして、ご丁寧にドウモ。でも気にしないで、貰い物だから。」 一体一本一万円もする羊羹をこの男に送る人ってどんな人なんだろう なんのメリットもないだろうに 何かの手違いだったんじゃないだろうか そんな失礼な事を思っていたら急に彼は笑いだした 「ななチャン、気付いてる?今俺の事すごい顔してみてるの こいつ何者なんだよって顔。」 あ、まただ 少年のような笑い顔 なんでだろう、 やっぱり 目が離せない いつの間に立ち上がったんだろうかアオイくんは 腰を屈めて私に目線を合わせ いつものニタニタ笑いに戻った顔で首を傾げながら 「そんなに見つめられたら変な気おこすかも」 と言い放った いやいやいや いやいやいや 急に近づいた距離に戸惑いながらも冷静に返す自分の声の冷たさといったらない 「ありえないですから、 止めて下さい」 それに、そんなセリフは イケメンにしか許されないのよ アオイくん 心の中でそう付け足しながらその場を離れ、隣のブランコに腰掛けた
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