出会いを無下にする事なかれ

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次の日の土曜日は 一日中家事に追われていた 掃除に洗濯 スーパーへの買い出し その後は 一週間分の晩御飯のストックを作って冷凍庫へ 予定していた用事を全て終わらせ 充実感を感じながら 早めの眠りについた ーーー日曜日 今日は久しぶりに麻衣子と映画を見に行く事になっていた 観たのは話題の恋愛映画 スクリーンの中では 綺麗な顔立ちの女優が これまた 素晴らしく整った顔立ちの俳優に 愛を叫んでいた それに応えて抱きしめる男 こんな美男美女なら 最終的にくっつくのは当たり前じゃないか 「……。」 いつからだろう こんなに冷めた目で 恋愛映画を見るようになったのは いつからだろう 自分の気持ちにフタを出来るようになったのは 私はこの女優みたいに 愛を叫べない 叫んだ事がない 叫ぼうとも思わなかった こんなふうに 気持ちを伝えるには どれ程の 勇気と愛情が 必要なんだろう ケイトも含め元カレと呼べるのは三人 相手の押しの強さに なんとなく流されて なんとなく付き合って 徐々に好きになっていって 私は順調だと 上手くいってると思っていたのに 何故か フラれる ケイト以外の二人に フラれた理由は "お前は別に俺じゃなくてもいい" だった そうじゃないと思うのに 何故か否定ができなくて 悲しいのに 去っていく背中が追えなくて しばらく泣いて あっさりと忘れる "お前は別に 俺じゃなくてもいい" 本当にそうだったのかもと そんな気持ちさえ出てくる ケイトだってもしかしたら そう思って別の女性と 付き合っていたのかもしれない あまりにも低い 私の恋愛偏差値 映画の中の彼女みたいに 伝えたい気持ちがあふれる程 なりふり構わず縋り付ける程 人を好きになるのには そうなるのには 私の好きは どれだけ足りなかったんだろう 私は今まで自分から 人を好きになった事が無い 相手が用意してくれた枠に飛び込んできただけだ   こんな女が 愛を叫ぶのは無理があるのかもしれない そもそも 世の中の人は どんなふうに どうやって 人を好きになっているのか 帰りに寄ったお店で 器用にパスタをクルクルと巻く彼女に聞いてみると あっさりと答えが返ってきた 「恋におちればいいのよ 頭じゃなくて心でね」 空には 曇り空が広がっていた
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