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「雨だし来ないかなとは思ったんだけど、イチオウね。
それに渡したい物もあったし。
貰い物で悪いけど、はいコレ。」
そう言って受けとったコーヒーの代わりに有名所のチョコレートショップの紙袋をズイッと私の目の前に差し出してきた
「いや、でも、貰い物を頂く訳には…」
その紙袋に目線がくぎ付けになりながらもここは、大人として遠慮する
「いーから。俺甘いもの食べないから、遠慮なくどーぞ。」
それならばと
男の人にしては綺麗な指先に掛かるそれを図々しくも受けとる
「…ありがとうございます。」
そんな私を見ながら
アオイくんはいつものニタニタ笑いを浮かべた表情で言い放った
「昔さぁ、バレンタインのチョコ食べ過ぎて、それから甘いものダメになってさ。モテるのも考えものだよね。」
「…ソウデスカ。」
なんて
おめでたいんだろう
彼なりの冗談だろうか
ここは笑うべき所なのか
どうなんだろう
…いや
もう何も言うまい
黙っていよう
そう思って
彼の隣の壁に身を預けた
けれど、なにか落ち着かない
なんか、ソワソワと心が波立つ
というのも
いつものブランコよりも少だけ近い彼との距離
鼻をくすぐるアオイくんの香りが妙に気になったからだった
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