出会いを無下にする事なかれ

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黙ってタンブラーを傾けていると 「ななチャンは何のお仕事してるのー?」 唐突に質問を受けた 「製薬会社の事務です。」 隠す必要もないので正直に答える …私も聞いていいだろうか恐る恐る尋ねてみた 「……アオイくんは?」 「あれ。俺の事気になってるの?」 まただ 「いえ、別に」 この前もこうやって はぐらかされた しかもこのいでたち 仕事なんてしてないのかもしれない 「ところで昨日は何してたのー?」 そして人には平気で聞いてくる 「…友達と映画を見に行きました、」 「何みたの? 友達って男ー?」 今日はやけに質問してくる彼を不思議に思いながらも聞かれた事にこたえる 「いえ、女友達と。 …恋愛映画を。」 そう答えた私に 「ななチャン、 カワイソウに彼氏いないんだね。 ちゃんと恋愛しなきゃ。」 いつものニタニタ笑いとはちょっと違う 楽しげな顔をして痛いところをついてきた …ほっといてよ 「…お互い様ですね。」 「ですかねー?」 いつものニタニタ笑いに戻った顔でこちらを見てくる彼に少しムッとして反論する 「…アオイくんは、いつから恋愛してないんですか?」 これもまた 応えては貰えないだろう 別にいいけど けれど私の予想と反して 「…してるよ」 「はっ?」 真剣な口調で 真剣な顔をして彼は言った 「してるよ、恋愛」
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