出会いを過度に期待する事なかれ

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ーーーー… 私の足元には真新しいヒール 目の前には 色鮮やかなサラダにパスタ 少し目線を上げると 同じ会社に勤める 大学時代からの親友がいる 黙ってれば美人と 言われ続けてきたこの親友は 満面の笑みで私に言う 「おめでとう、菜々子 あなたは運がいいわよ。 美味しいパスタは食べられるし 立ち直った今、 合コン行き放題ね! もちろん夜は空いてるでしょ?」 いつもより二割増しに 濃いメイクの意味に納得しつつ 「悪いけど、しばらくそういうのいいや。麻衣ちゃん変わりに楽しんできて」 すかさず断りを入れる 「え、菜々子、もしかして、もう男なんて懲り懲りとか思ってる? 私達は時間を無駄に出来る年齢じゃないのよ?」 親友はいつもより二割増しの大きな目をさらに見開いてそう言った ここでもう、”男なんていらない”なんて言おうものなら確実にその瞳は落っこちるだろう でもそんな事にはならない だってこの親友同様 そういうつもりはさらさら無い 「そうじゃなくて、私先週から早起きしてるの。だから夜はなるべく早く帰って寝たいの」 そう、私はこの前から いつもより少し早起きをしていた マンションの敷地内にある小さな公園のブランコに 座って持参したカフェオレを飲む ただそれだけの為に 毎晩のように会っていた彼はもういない その夜を埋めるような用事も頻繁にはない ぽっかりあいた時間 なにかイレギュラーな事がしてみたかった だからとりあえず 早く寝てみた すると早く目が覚める その時間 ただブランコに座ってるだけ だけど 忙しい朝が少し早く起きるだけでその色を違って見せる そんな贅沢な時間が あるなんて知らなかった だから しばらくは続けてみたいの そう伝えると 橘製薬が誇る人気No.1の 受付嬢である佐々木麻衣子は その綺麗に整った顔をゆがめて 今度は哀れむような目で私を見ていた
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