出会いを過度に期待する事なかれ

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これがうちの会社の 人気No.1受付嬢だったら この男が 合コン会場に現れた時点で 帰るだろう 彼女の得意技である 愛想笑いも拝めない程すぐに ついでに 罵声のひとつも飛んで来るかもしれない そのくらいひどい 「痴漢って、」 その男は 不気味にニタニタと笑いながら 「ひどいね、 たちばな ななこサン?」 私の名前を呼んだ ありえない、この人 「…ストーカー?」 「ちがう」 はい、これ。と 彼が手渡してきたのは さっきまで特製の カフェオレが入っていた 私の携帯用タンブラー 立ち上がった弾みで落としてしまっていたらしい なるほど、納得 そのタンブラーには "たちばな ななこ" と 私の名前がフルネームで書かれていた 「ぷっ、どこの小学生だよ。」 「違っ、これは友達が」 そう、これは数少ない私の親友である麻衣子が書いたものだ 私が前に使っていたタンブラーを無くしたのを知った彼女が 「これなら戻ってくるんじゃない?」って 現にどこかに置き忘れたハズのこのタンブラーは翌日私の元にちゃんと戻って来た 「いい友達だね。 ななチャンって呼んでいい?」 いい訳ないだろ 何言ってんの 「お兄さんの事は、アオイ君って呼んでいいから」 呼ぶわけない でしょ 何言ってんの しかも…アオイって 「…名前負けですね。」 ついポロッとでた私の失言に 彼はニタニタと笑いながら 「そうなりますかね?」 …だって なんか調子狂うな、この人 「ななチャン、おしごとはー?」 「あっ」 しまった!遅刻する! 慌ててこの場を去ろうとしたその時、突然右腕をその男に捕まれた 「な、なにす……拉致!?」 「ちがう」 「じゃあ、離してください」 「ねぇ、ななチャン。お兄さん明日も来るから美味しいコーヒー煎れてきて?」 「無理です!てか名前、呼ばないで下さい」 「あれー?なんでだろ。背中が痛むなぁ?」 信じらんない なんて厚かましいのかしら こんな強引な事が許されるのは イケメンだけなのに 「じゃあ、また明日ね。俺ブラックしか飲まないから。ばいばい、ななチャン」 そう言うと男は私の返事も聞かないまま掴んでいた腕を離してあっという間にその場から消えた
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