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「ねぇ、それ、もしかして零余子(むかご)?」
その声を聞いたのは、丁度、温室から出たときだった。
振り返った其処に、女性の姿があった。
緩いウェイブの入ったボブから覗く小粒の鈍真珠(にびしんじゅ)が、黒染のワンピースの肩に暮れ始めの西陽を照り返してい。
それが、控えめに引かれた口もとの蘇芳と相まって、どことなく、
(散る前の朽葉……)
を思わせ。
三十路の入口あたりだろうか……。
明らかに葬列帰りと分かる其れだが、その年齢にありがちな所帯臭さは、ない。
この近隣の“土地の人”でないことは、すぐに分かった。
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