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あまりは、もう二度と箏を弾くことはないだろう。
トランペットも同じである。
誰かのための演奏は、もう要らない。
あれは、奏江のためだけにあったものだった。
ずっと室内に居たので感覚を忘れていたが、空はまだまだ青かった。
絶好の買い物日和だ。
無意識に、口から笑い声が漏れる。
声に出して笑う権利は、あまりにはなかった。
あまりが心置きなく笑える場所もなかった。
(そんなこと、一体誰が決めたのかしら)
そう思うとまた楽しくて、先ほどよりも大きな声で笑った。
涼しくなって来た秋の真っ只中で、ぐちゃぐちゃの髪にシャツと短パン、そして裸足という薄着はかなり肌寒い。
ぶるぶる震えて鳥肌が立つが、それすら楽しくなり、あまりは大きな声で笑った。
何よりも自由な空に向かって。
その頬を、温かなものが伝っていった。
...end

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