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私は閉じ籠っていた部屋から出て、思い出の地へと足を進めることにする。
両親が心配そうに此方を見てくるが、私は二人を見ることをしない。
?「―――さようなら。今まで育ててくれて、ありがとう」
私は両親に聞こえるか聞こえないか分からないぐらい小さく、そしてはっきりとした声でそう告げる。
暗い夜道をゆっくりと歩き、思い出の地へと赴く。
そこは街が一望できる位置にあり、夜景がとても綺麗な場所だった。
そこにあったベンチに腰をかけ、あの時と変わらない夜景を眺める。
?「……何だか、ロマンチックだね」
あの時と同じ台詞を口にする。
すると、何故だろう。
兄があの時と同じように素っ気なく返事をしたように感じられる。
―――天国で私を見守っていてくれるのかな?
そんな乙女チックなことを考えながら、私は空に向かって口を開く。
?「ずっと一緒って言ったよね。―――今、会いに行くから。待っててね、お兄ちゃん」
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