鳩ポッポッー

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ガラガラっと戸を引き教室の中に入ると 女子から黄色い悲鳴が、男子から溜め息が‥ …なんてあるわけなく、何処か全員から鋭い目線がやってくる 「自己紹介」 とぶっきら棒に先生に促され 始めると明かに嫌味の籠った声が聞こえてきた 「村長の家に転がりこんだそうだよ きっとこのクラスに入れたのだって 村長が裏で何かやっているに決まっているさ」 とか、 「理事長の遠い親戚で、 理事長に答えを聞いたらしいよ」 「いやいや違うよ 理事長を脅して答えを聞き出したらしいよ」 「私が聞いた話では 夜中に侵入して答案用紙を奪ったらしいわよ」 と、根も葉もない噂が次々と聞こえてくる 俺も軽い有名人だなと特に何かを言うわけでもなく聞いていた すると、 「大体さ、あの村長も怪しいんだ なんで、あんな大した金持ちでも無い人間が村長なんてやっているんだよ 僕の父さんのほうがあんなのより よっぽと良いに決まっている」 とジクスさんの文句に変わり始めていた 俺への文句は構わないが、流石にジクスさんの文句は苛々して「おい」と声を出そうと口を開きかけた時、 「お前等何言ってるんだよ!」 と先に声を発する者がいた 「お前等が言ってんのはただの負け惜しみにしか聞こえねぇよ それに、そんなに文句言ってっと馬鹿っぽく見えんぞ それとも馬鹿っぽく見えんじゃなくて ただの馬鹿なのか そしたらだいぶ滑稽だな」 その誰かは俺が言おうとしていたセリフを見事に取っていった 俺が言っていたらもっと荒くて、もっと煽っていたかもしれないが‥ そこには触れないでおこう‥ そのセリフを取っていった男は俺と同じくらいの歳で、 随分と正義感に溢れた強気な雰囲気を出していた 馬鹿にされた生徒数名は舌打ちをしていたが 前のようには文句を言わなくなった 先生はというとそんな事には全く興味が無いようで 無情にも本を読んでいる 本当に最低だな… 静かになった教室をちらりと一瞥した後、やっと終わったかとでも言うように わざとらしい溜め息をついて話し始めた 「えー アキト・タカダ君です みんなも仲良くするように 席は空いている所に座って ‥授業を始めます」 席につくと隣は、さっき俺の言葉に被せてきた男で、座るやいなや話しかけてきた 「さっきは悪かったな 俺は、テッラ・リトマスだ よろしくな」
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