オーブンブブブン♪

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窓越しから太陽が部屋を照らす アキトは泣き疲れてジクスのベットで寝ていた 目が覚めるとまた悲しみは込み上げてきたが 昨日よりは落ち着いていた そのまま洗面所へと行き、鏡の前に立つ 目は真っ赤に腫れ上がっていて昨日どれほど泣いたかを物語っていた 声も酷く掠れていた グルルル 腹の虫が鳴り昨日の昼から一切何も食べていなかったことに気がつく どんなに悲しくても、どんなに辛くてもお腹が空く事が なんだか可笑しくて笑みがこぼれる 料理場へと行き簡単な物を自分用に何品か作るつもりが 冷蔵庫にある全ての材料を使って大量に作ってしまった まるで初めてジクスさんの家に来た日、大量に作ってしまった時にタイムスリップしたようで、凄く懐かしかった ‥凄く美味しそうにいつも食べてくれてたな‥ジクスさん‥。 目頭は熱くなったが、不思議ともう涙は出なかった。 「‥いただきます」 この食卓で1人で食べるのは初めてだった。 今ならジクスさんが言っていた「1人で過ごすには広すぎる」という言葉がよくわかる。 この家は1人で過ごすには広すぎる‥。 意外にも沢山食べることが出来て、残った物は弁当に詰めて外でも食べられるようにした 食べ終わり洗い物も終わると自分の部屋に行き荷造りを始めた 元からあまり所持品という所持品が無いために直ぐに終わり 昨日ずっといたジクスの部屋へと再び向かった 扉を開け中に入り辺りを軽く見回すとある物に目が止まった その物をアキトは掴む 「よし‥これにしよう」 ジクスさんが毎日着けていたピアス 昨日は着けていなかったらしく机に置いてきぼりを喰らっていた ジクスさんと過ごした時間の思い出として何か持っておきたかったのだ 昨日テッラ達とお揃いで買ったキーホルダーを代わりに机に置く 机に置くと窓から差し込んでいる光と反射し綺麗な水色が机に写し出される それからアキトはピアスケースにピアスを仕舞ってジクスの部屋を後にし荷物を持って外へと出た 初めてこの村に訪れたときに通った道を戻るように通り ジクス、テッラ達と出逢えたこの村から出た
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