0人が本棚に入れています
本棚に追加
執事、ものすごい速さで階段を駆け上がる。
そこへ、すれ違いざまにゆっくりとヒャルマルが降りてくる。
ヒャルマル「(遠巻きに)おやおや、下が賑やかだね。
フリートもお客様が来たなら早く言えばよいのに」
執事「我が君ーーーーーー!!」
ヒャルマル、怒涛の走りを見せる執事をさっとよける。
執事、そのまま踊り場の壁に激突してノックアウト。
(ものすごい音、燭台やら飾ってある絵やらがしばらく揺れる)
ヒャルマル「はっ!…おっとっと、間一髪。
フリート、そんなに焦っていると壁に…
あぁ、もうぶつかってしまったようだね」
メイド「これは大変!休憩室に寝かせてまいります!」
ヒャルマル「すまないね、頼むよ」
メイド「はい!よっこらしょっと!」
メイド、こともなげに執事を抱えて去ってゆく。
ヒャルマル「さて…客人とは、このうちの誰かな?」
シチリア「見れば分かると思いますけど」
ヒャルマル「おお、君か。自分から声をかけてくるとは。
物怖じしない性分なんだね、気に入ったよ」
シチリア「たった一言で気に入るとか、単純すぎないですか」
ミル「…という具合に、なかなか気の強い方なんです。
あ、お名前はシチリア・トレダーノさんだそうです」
ヒャルマル「シチリア…なるほど、オトラントの方かな?」
シチリア「とんでもありません。アルメリア人です!」
ヒャルマル「なるほど…これはこれは、ぜひともうちの娘に会ってほしい。
ミル、君もそう思ってここに連れてきたんだよね?」
ミル「ご名答♪」
シチリア「早く国に帰りたいんで、とにかく早く会わせてください」
ヒャルマル「まあまあ、そう焦らずに。慌てる士官は貰いが少ない…
功を焦ると昇進も遠くなるよ」
シチリア「それ士官じゃなくて乞食だから!
…てか、何であんたもあたしの正体知ってるのよ!」
最初のコメントを投稿しよう!