1章『漂着』

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□ファレン地方、カルデン周辺の細道 隣町からカルデンへの細道をエドムント・ベック(エド)が 歩いている。 エドムント「近道、近道っと…」 エドムント「ん?なんだありゃ」 道を取り囲む木々の中にちらりと見えた軍服。 エドムント、そちらに近づいてゆく。 ―そこには一人の女性が、意識もなく倒れている。 エドムント「…!!おい、大丈夫か!」 □カルデン市内、ミルドレッド・シュタインマイアー(ミル)の家 苔むしたテーブルで、きのこたっぷりのスープと ブルーチーズを塗りこんだパンを二人の女性が食べている。 ザビーネ「ミル、誰か新しい仲間は見つかりそう?」 ミル「無理です♪」 ザビーネ「ごめん、わたしもなんだ」 ミル「私たち、一歩外へ出れば変人扱いですもんね」 ザビーネ「うん、その自覚はある。でも譲る気はないよ。      …ファレンは、いずれ一つにならなくちゃいけないんだ」 ミル「私たちだけでも行動を始めたいところですけど…    正直、もう一人ぐらいは協力者がほしいですね」 ザビーネ「そうだね、あきらめずに探さないと。      …んっ!!何この匂い…??」 ミル「あっ、今日のパンには裏表にたっぷりと    ブルーチーズを塗ってあるんです」 ザビーネ「せめて片方だけにして…いくらわたしでも      ミルと同じ境地に達してるわけじゃないんだよぉ」 ミル「何言ってるんですか。これほど女らしくてたまらない香りの食べ物なんて、    ほかにないですよ?」 ザビーネ「ミルー、ちょっと目つき危なくなってるよー」 ミル「いつものことじゃないですか♪…あら?」 と、ノックの音。 ザビーネ「どうしたの?」 ミル「誰か、入り口に来てますね」 ザビーネ「わたしが見てくるよ」 ミル「すみませんね」 ザビーネ、ドアを開ける。 ―そこには、シチリアを背負ったエドムントが立っている。
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