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神が住む小屋のすぐ近くの森からは、激しい金属音が聞こえていた。
不規則に並んだ木々は、ただでさえ行動のしにくい林を、更に行動しにくくしていた。
ここが、吉野や屋久島の杉林のように、うまく日の光を浴びるために規則正しく一定の間隔をもって生えているのならば良いのだが、ここヴァルハラーでは『神』が発動させた天変地異魔法によって、木々は日光を、というより生きるためのエネルギーを必要としない。
ということは、つまり木々が隣り合うようにして壁のようにそびえ立っていたり、急に開けた土地を用意したり、ととても動くに動けない状況が産み出されているのだ。
あちこちで発生している衝撃波は止む事はなく、偏りのある配置の木々を休ませる間もなく揺らせ続けている。
ある衝撃波が木々を揺らしたと思えば、次の衝撃波が別の方向から叩きつける。
今にも倒れそうなほどに傷ついた木々は、色々な方向から襲う衝撃波に、倒れることすら出来ない。
そして、 相模藁 覇埜小(サガミワラ ハノコ)は、その衝撃波の渦中で、ただ祈り続けていた。
"君達は必ず勝てる"と。
騒動の中心から見える光景は、文字通り戦争であった。
覇埜小の周りに配置された少女たちは約10人。
多方から襲いかかってくる攻撃は、少女たちに全て弾き落とされる。
地が踊り、風が笑っていた。
多方向からのビーム?攻撃に、地面を歪ませて相殺させる。
突然の辻斬りに、風をぶつけて消す。
常識から外れたその戦いには、当然のように常識は通用しない。
防戦一方である覇埜小らが、攻撃に移転することはない。
覇埜小らにとって敵と呼べる者が存在しないのだ。
覇埜小のすぐ近くで佇んでいる赤髪の少女は、目の前に突然出現したビームに、どうすることもできなかった。
摂氏3000℃の熱線。それを浴びればひとたまりもないであろう、それすらも赤ん坊の攻撃とすら感じられるほどの威力。
それは、自然界のものでは無か
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